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風邪(かぜ)に関する説明

風邪に「葛根湯」が効く人、効かない人

「風邪かな?」と思ったら葛根湯(かっこんとう)を飲むと早く風邪が治ると言われますが、この葛根湯、体質によって効く人と効きにくい人がいるというのはご存知でしょうか?

ここでは葛根湯が効く人はどのような人か、そして効かない人はどんな人でその人はどうすればいいのかをご紹介致します。

葛根湯とは?

葛根湯(かっこんとう)とは、日本でもっとも親しまれている漢方薬の一つで、風邪のひき始めに効くとされ、ドラッグストアなどでも手軽に入手できます。

葛根湯に含まれている生薬

葛根湯は植物の茎や根などを成分とした7種類の生薬からできています。いずれも風邪の症状を和らげる効果があります。

葛根(カッコン)

葛根湯の主成分である生薬です。葛根とは「クズ」という木の根です。発汗や解熱の効果があります。

麻黄(マオウ)

麻黄とは草麻黄(シナマオウ)という常緑低木の地上茎を生薬にしたものです。咳や鼻水、痰に効果があるとされます。漢方の中でも薬効の強い生薬で、この生薬が原因でドーピング検査が陽性になることがあります。

桂皮(ケイヒ)

桂皮とはトンキンニッケイと言われる木の樹皮を生薬にしたものです。一般的にシナモンとして知られています。血行促進、健胃、鎮痛などの効果があります。

芍薬(シャクヤク)

牡丹科の花で知られるシャクヤクの根を生薬にしたものです。鎮静、鎮痛、炎症を鎮める効果があるとされます。

甘草(カンゾウ)

甘草はマメ科の多年草で、その根を生薬にしたものです。甘みがあり醤油の甘味料にも使われています。咳や喉の痛みに効果的で、アレルギー症状にも有効であることが知られています。

大棗(タイソウ)

大棗はナツメという木の果実を生薬にしたものです。滋養強壮、鎮静の他、食欲増進などの効果があるとされます。

生姜(ショウキョウ)

生姜とはショウガという多年草の根を生薬にしたものです。いわゆる薬味の「しょうが」のことです。発汗作用があり、吐き気や和らげ胃を整える効果があるとされます。

葛根湯の薬効・効果

葛根湯は「風邪」のひき始めに効果的とされ、葛根湯をのむと風邪の予防、もしくは風邪をひいてしまっても早く治ると言われます。

また、血行を良くして体を温める作用があるとされ、肩こりや頭痛、じんま疹などにも効果的と言われます。

葛根湯が効く体質の人

葛根湯が効くのは漢方用語で「実証(じっしょう)」と呼ばれる体質の人です。

実証とは?

実証とは、簡単に言うと「もともと体力のある人」のことを言います。

具体的な体質例としては、「暑がり」「汗をかきにくい」「筋肉質」「食べるのが早い」「胃腸が強い」「生理痛が強い」といったものがあります。

まぁ、「ずばり!健康な人」という感じですが、暑がりなのに汗をかきにくいという点がポイントでしょうか。

実証の人の風邪の症状=葛根湯が効く風邪の症状

実証の人が風邪を引くのは体力が低下するというより、有害物(ウィルスや細菌)が体の中を蔓延するからと考えられています。

そして、実証の人が風邪をひくと次のような症状が出る傾向があります。これは同時に葛根湯との相性を示しています。


  • 強い寒気

  • 首や肩がひどく凝る

  • 脈を強く打つ

  • しかし、汗はあまりかかない

このような風邪の初期症状であれば、葛根湯が効果的と言えるでしょう。

実証の人が風邪のひき始めに葛根湯を飲むと一旦熱は上がるかもしれませんが、2日ほどで症状が回復することが期待できます。

尚、実証の人が本格的に風邪をひくと症状が重くなる傾向があります。早めに葛根湯を飲むようにすると良いでしょう。

葛根湯が効かない体質の人

葛根湯が効かないのは漢方用語で「虚証(きょしょう)」と呼ばれる体質の人です。

虚証とは?

虚証とは、簡単に言うと「もともとあまり体が強くない人」のことです。

具体的な体質例としては、「冷え性」「水太りか痩せ型」「顔色が悪い」「疲れやすい」「胃腸が弱い」「生理痛が酷くない」といったものがあります。

いかにも体力の無い人という感じですが、ポイントは「冷え性」というところです。体が冷えている人には葛根湯が効きにくい傾向があります。

虚証の人の風邪の症状=葛根湯が効かない風邪の症状

虚証の人が風邪を引くと体の臓器が弱まり体力が低下する傾向があります。

具体的な風邪の症状としては次のようなものがあります。これらは同時に葛根湯との相性の悪さを示しています。


  • 寒気はあまり無い

  • 熱もあまり無い

  • 体が冷えている

  • 脱力感があり元気が出ない

  • のどが痛い

  • くしゃみ鼻水がでる

  • 脈が弱い

このような風邪の初期症状の人は、あまり葛根湯の効果があまり期待できません。

虚証の人が本格的に風邪をひくとなかなか治らず長引きますが、比較的おだやかな症状ですむ傾向があります。

しかし何故、虚証の人には葛根湯が効かないのでしょうか?その理由は葛根湯が風邪を治す仕組みにあります。

葛根湯が風邪を治す仕組み

葛根湯が風邪を治す仕組みは諸説ありますが、簡単に言うと「体温を上げて風邪ウィルスを殺す」ということが基本となっています。

風邪はウィルス感染によって引き起こされますが、ウィルスは熱に弱いため、葛根湯によって一気に体温を上げることによってウィルスを弱らせます。

また、血行が良くなるため免疫機能が向上し、各免疫細胞が弱ったウィルスを効果的に攻撃できるようになり、死滅させます。

これが葛根湯が風邪を治す仕組みです。

何故、虚証の人には葛根湯が効かないのか?

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、葛根湯の効能には前提があります。それは「体温が上がる」ことです。

虚証の人は基本的に冷え性で体が冷えているので、葛根湯を飲んでも十分に体温が上がりません。

その為、風邪ウィルスを弱らせることができず、効果が十分に出ないのです。

では虚証の人や冷え性の人は風邪のひき始めにどう対処すれば良いのでしょう?

虚証・冷え性の人が風邪のひき始めにすべきこと

虚証や冷え性の人に葛根湯が効かないとすれば、その人達は風邪のひき始めに何をすれば良いのでしょうか?

漢方を使うとすれば、次のものが虚証の風邪に効果的と言われています。

麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)

体を温めのどの痛みなどを和らげる。発汗作用もある。

小青竜湯(ショウセイリュウトウ)

くしゃみ、鼻水、咳などを鎮める。発汗作用や体の痛みを鎮める作用もある。

桂枝湯(ケイシトウ)

頭痛や筋肉痛を和らげる。軽い発汗作用があり、体の熱や痛み、腫れを鎮める。

香蘇散(コウソサン)

軽い発汗作用があり、体の熱や痛み、腫れを和らげる他、頭痛はじんま疹を鎮める。胃腸に優しい。


上記のものは虚証の人における風邪の初期症状に効果的と言われる漢方薬ですが、それぞれ効能に特徴があったり、人によって胃腸を悪くするなど副作用の可能性もあることから、漢方の専門医や薬剤師に相談してから利用するようにしましょう。

また、基本的に体が弱っているので、体を温めてゆっくり休み体力を回復させることを心がける必要があります。

尚、胃腸も弱る傾向があるので、体力を回復させようと無理に精がつく食事をせず、お粥など胃腸に優しい食事で胃腸を休めることも必要です。

基本的に虚証の人は市販の薬で風邪を治すことは諦めて、まずは病院で診てもらうのが良いでしょう。

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